2016
Egao kan 福岡市こども総合相談センターえがお館

本当に困っている人にとって、相談しやすい窓口を

福岡市こども総合相談センターえがお館 Egao kan

本当に困っている人にとって、相談しやすい窓口を

2016年2月4日に福岡市こども総合相談センター「えがお館」のウェブサイトがリニューアルされました。
私はロゴ、キャラクターおよびウェブサイト全体のデザインを担当しています。

【福岡市こども総合センター えがお館】
http://www.city.fukuoka.lg.jp/kodomo/egaokan/

このウェブサイトができるまでの過程がとても丁寧に記事にされているので、ぜひこちらをご覧ください。

【福岡から「児童相談所」のイメージを一新する試みを進めたい! 九州大学の田北雅裕さんがクラウドファンディングを経て、行政にデザインを寄付するまで】
記事:greenz 前田亜礼さん
http://greenz.jp/2016/02/17/takita_masahiro_motiongallery/
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サイトのデザインについて
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初期のミーティングで出てきた「優しいだけじゃない、力強く、明るく、頼りがいのある」というキーワードが全てを引っ張ってくれました。優しくやわらかいトーンになりがちな“相談窓口”を、妙にガタイの良いキャラクターが迎え力強く受け止めてくれる、真面目なだけじゃなくユーモアをもって間口を広げられる、そんなウェブサイトになれば良いなと考えてデザインしています。メインのモチーフは、太陽。こどもの笑顔は一瞬で場を明るく温かなものに変えてくれる太陽の様な存在だと感じたので、提案しました。

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プロジェクトと所感
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えがお館のプロジェクトは、思う事がありすぎてなかなか記事にすることができませんでした。デザイン、仕事、そういったもやもやと考え続けている部分を、えがお館のプロジェクト紹介と一緒に少し文章にしたいと思います。

学生時代に何を学んだかと言われたら「デザインは人を幸せにするためにある」ということでした。

中でもグラフィックデザインの世界に惹かれたのは「色々な情報を温度を持って、より分かりやすく、たくさんの人に伝える」力をもっているからでした。温度というのは、誰かが何かを語る時の、声の抑揚や表情や身振り、果てはその人自身の背景やストーリーなども含めて、言葉以外の部分の情報のことです。誰がどんな風に何を言うかで、同じ言葉も違った伝わり方をします。グラフィックデザインは、ひとつのメッセージに温度を付け加え、ひとつのロゴ、一枚のポスター等へと昇華していく仕事だと考えています。

良いサービスや製品をより魅力的にし、沢山の人に届けるためにデザインは必要不可欠で、投資がされ質が高まりました。商業ベースのデザインは本当にため息が出る程素敵なデザインであふれています。一方、公共的な情報や空間においてデザインの優先度はまだとても低く、最低限の機能や目的だけが下書きの原稿用紙の様な状態で世に出されている場面が多々あります。それでは、その情報が「自分に向けて発信されている」と気づくこどができず、必要としている人に届きません。

リニューアルされる前の「えがお館」のウェブサイトも、同じ様な下書き状態で世に出されていました。この状態に危機感を持たれていたのが先の記事で紹介されている田北さんです。これまでも田北さんの取り組みや講演を聞きに行っては、その活動の目的や過程、結果にたくさんの刺激をうけていました。けれども、自分自身ができることは小さく感じ、興味を持っているに留まっていました。

現に私も、プロジェクトが始まる直前に第一子を出産し、子育てに悩んではインターネットで検索をしたりしたものの、このウェブサイトを見た瞬間そっとウィンドウを閉じた覚えがあります。でも本当は、この先にはたくさんの有用な情報と、相談センターで働く人々の熱意や受け皿、ネットワークが広がっていました。そして、それらと繋がれば救われるこどもたちが沢山いるのです。

「えがお館」ウェブサイトリニューアルの肝は「行政だけでは投資先になりづらいデザインを、クラウドファンディングを使って寄付する」というアイディアでした。(みんなの力で児童相談所のホームページをデザインしたい!クラウドファンディングのページ)日々、役所に行く度にたくさんの広報物の“デザインの手つかずさ”にもんもんとしていた私は、このプロジェクト概要を聞いて頭を殴られた様な衝撃でした。大切な情報と、それを得たい人、純粋にそれらを繋ぐデザインに参加できたことは本当に貴重な経験でした。今後もこの時感じた思いや得た考え方をベースにデザインでできることも模索していきたいと思っています。

数年前より、クリニックやこども関連の仕事が増えています。緊張したり、嫌な気分だったり、あまり積極的に行きたいわけではない場所が、デザインで少しでも明るく楽しい場所のイメージに変われば良いなという一心で取り組んでいますが、そういったトーンが上記のような行政関連の情報をラッピングするのにも共通しているのではないかと考えているところです。

  • Client福岡市こども総合相談センターえがお館
  • Production「行政とデザイン」プロジェクトチーム
  • CD田北雅裕(九州大学教育学部)
  • AD & Graphic & Characterウフラボ
  • Website & Coding田崎敦子
  • Photo酒井咲帆
  • その他技術アドバイス:屋代敬介・熊澤正(株式会社ディーゼロ)クリエイティブアドバイス:オカダン・グラフィック、川添精一郎編集 / ライティング:えがお館職員、九州大学田北雅裕研究室協力:K-ADC、稲田ゆきこ、寺山武士、柴尾聡子、市民のみなさま